

この記事のポイント
働き方改革を契機に業務を再構築
分業制から横断的な業務体制へ移行し、提案力と組織力を向上
スタッフが自発的にマニュアルを作成、自分たちの手で環境を整備
RIKCADで建物と庭、一体の提案を
建物と庭を一体にしたトータル提案が可能
建物設計時に外構・庭の設計を考慮できるのが強み
ブランド価値を強化する統一されたガイドライン策定
衣服、立ち居振る舞いや対応まで含めた一貫したブランド形成
- 今後は地域課題・次世代の取り組みへ積極的にチャレンジ
地域素材の活用など、地域と未来を見据えた展開
社員一丸となりさらにブランディングを深化。縦軸から横軸への業務の再設計
2018年に事例取材して以来の再取材として訪れた日本ハウジング株式会社。
代表取締役の馬場鉄心氏とランドスケープ室 室長・古賀千夏氏にお話を伺った。
地産地消に基づいた丁寧な“大分らしい”家づくりはそのままに、大きく変貌を遂げたものがあった。
それは「個々のスタッフの業務を再定義」したことだ。建物設計・外構設計・インテリア計画といった業務の分断を見直し、
「誰が、どの工程で、何を判断するのか」を組み替えてきた結果、提案力と組織のあり方は大きく変わっている。
大分県全体は人口減少の局面にありながらも、大分市は微増傾向にある。
同じ大分県内でも豊後高田市では移住者数が全国トップクラスになるなど、地域ごとに状況は大きく異なっている。
いずれにしろ、人口減少は地方の大きな課題だ。
| 馬場「人口減少の観点から見ても、着工数が落ちていくのは必然だと思っていました。だからこそ、着工数を増やすのではなく、付加価値をどう高めるかに軸足をおいて“府内町家”というブランドをたちあげ、私たちが一番良いと心から思える家づくりに邁進してきました。」 |
“府内町屋”ブランドを運営するにあたり、建物設計・外構設計・インテリア計画の業務は分業制だった。
それぞれの業務には波があり、オーバーワークになることもしばしばあったが、看過されていた。
コロナ禍になり、在宅ワークの導入や時差出勤など、日本ハウジング(株)でも働き方改革が一気に進んだ。
そこで同社が意識したのが「ピークカット」という考え方だった。
忙しさを個人で抱え込むのではなく、チーム全体で仕事を分散・共有する。そのために、分業制を見直した。
かつては建主対応が中心だった担当者も、縦軸(専門性)を保ちながら横軸(領域)を広げ、
設計・内装・ガーデンまでアンテナを張るようになった。
| 馬場「全員の勤務時間を減らしつつも提案の付加価値を上げるには、みんなで一枚岩になる必要がありました。」 |


▲施工事例
業務フローを整備し、マニュアル化したことで訪れた変化
縦軸から横軸へと業務の横断を敢行したことは、社内の改革につながった。
スプレッドシートで業務フローを整理し、現地調査・プレゼン・計画、着工までのフローを明文化。
まずはマニュアルを見てやってみる、分からなければ聞く。
その積み重ねがデータとして蓄積され、属人的だった仕事は徐々に仕組みへと置き換えられていった。
新人社員にとっても、整備されたフローとバックアップ体制が見えることは大きい。
| 古賀「私は外構設計担当でしたが、住宅やインテリアの業務をマニュアルを見ながらチャレンジして少しずつ身に着けていきました。わからなければ専任のスタッフに聞けるので、理解もしやすかったです。見守ってくれている感じがありました。逆も然りで、建物設計のスタッフが外構のことでわからなければ、もちろん私がバックアップします。」 |
馬場「ずっと社内フローや、ステップアップの仕組みを整備したいという気持ちはありました。社員がマニュアルを見て実践して、ここはもっとこうしようと改訂を加えてくれていて、作って終わりではなくブラッシュアップし続けている事も嬉しいです。」 |
自分たちがよりよく働けるように、社員自らが環境を整えている。
その背景には風通しの良い日本ハウジング(株)の会社の風土も大いに影響しているのだろう。
RIKCADが可能にした住宅のトータル提案
日本ハウジング(株)では、長年にわたりRIKCADを活用してきた。
提案パースとしてお客様に提出するだけではなく、施工時のチェックにも使う。
時間効率とクオリティの両立が可能になり、スタッフのレベルだけでなく、お客様の理解度も上がっていった。
特に、住宅と外構の調和は“府内町家”のブランディングに欠かせない。
| 古賀「例えば、ソファに座ってリビングからはこういう景色が見えますよ、と具体的に示すことで、カーテンのない暮らしや視線の抜け、角度による見え方までシミュレーションできます。弊社の強みは、住宅設計の段階で外構のプランも加味することができるので、目隠しやプライバシー保持のコントロールを建物・外構が一体となっておこなえることです。RIKCADは、弊社が建物作成で使用しているCADデータのスムーズに取り込めるので助かります。」 |
以前は150〜200万円台が中心だった外構提案も、現在では250万円以上が当たり前になりつつある。
単純に金額が上がったというより、付加価値がきちんと伝わるようになったと実感しているという。
こちらも縦軸から横軸に業務を移行し、全てのスタッフの水準があがったことが繋がっているようだ。


▲カーテンがなくてもプライバシーに考慮した設計のリビング(左) パブリックガーデンのある住宅と庭の事例(右)
ブランドを形成するスタッフの「在り方」とは
日本ハウジング(株)では、ブランドガイドラインを定めている。
服装はコットンやウールなど自然素材を着用し、WEBサイトのフォントや広報で使用するテイスト、
お客様対応時の言葉遣い、府内町家を提案する際の立ち居振る舞いまでガイドライン化している。
ホテルマンのように、空間と体験を大切にする姿勢が、仕事の随所に表れている。
かつては、個々がセルフブランディングをしていた時期もあったが、今は「会社としてどう見えるか」を重視する。
古賀「最初は、着用する衣服や対応時の話し方まで?と思い、窮屈で無個性になるのではないかと感じていました。ただ、私たちスタッフも“府内町家”ブランドを形成している、重要な要素です。自然素材にこだわっている家ですから、提案する自分たちも自然素材の衣服を着て、誰がどう話しても“府内町家”の魅力がきちんと伝わるようにするには、ガイドラインは必要だなと今は実感しています。」 |
次世代と地域のために新たなチャレンジ
日本ハウジング(株)の視線は、次世代と地域に向いている。
空き家活用、町家のリフォーム、まちづくりやコミュニティ再生。
インバウンドに振り回されるのではなく、大分の良さを丁寧に掘り起こし、産業としてつなげていく。
大分県産材への関心もその一つだ。現在、古賀氏は新たな取り組みにチャレンジしている。
古賀「綿花を育てて、布や紙にしオリジナルの資材として使えないかと今、テスト段階なんです。今後、もし府内町家で取り入れることができれば、綿花栽培を地元の就労支援センターと提携して運用する等、地域社会と手を取り合っていければ…という構想もあります。」 |
素材へのまなざしは、“府内町家”ブランド、ひいては日本ハウジング(株)の思想そのものだ。
成熟はゴールではなく、マニュアルも仕組みも磨き続け、改善し続ける。
住宅・外構・まちづくりを横断しながら、日本ハウジング(株)のつくる家は、これからも更新されていく。

取材日 2026/1/20
:取材協力:
日本ハウジング(株)
所在地 大分県大分市
代表取締役 馬場鉄心