地元・長崎以外でも国内各地、海外でも活躍している西海園芸・山口氏。
提案の際にはRIKCADも使用していただいています。
華麗な受賞歴を誇る山口氏に庭づくりへの思いをお聞きしました。
地元・長崎以外でも国内各地、海外でも活躍している西海園芸・山口氏。
提案の際にはRIKCADも使用していただいています。
華麗な受賞歴を誇る山口氏に庭づくりへの思いをお聞きしました。
–目覚ましい活躍の山口さんですが、最近たずさわった仕事で楽しかったな~と思う仕事を教えてください。
「熊本の保育園の園庭の仕事ですね。
「まちの縁側」というテーマで、保育園の園庭なんだけどそこは地域のコミュニティの場でもあるんです。
“他人事から自分ごとにさせたい”と思ったんです、たくさんの人にこの園庭に関わってほしいと。
ただ植物を植えて終わりじゃだめだと思いました。
収まりが綺麗なだけの庭なんて、自己満足でしかないんです。
そうじゃなくて本当の意味で人に愛されるものってなんだろうって思うんですよね。
それはやっぱり人と人が触れ合って顔を合わせて他愛ないことを喋れる、
コミュニティの場所なんじゃないのかなって。
園の子供たちと花苗や芝生植えたり、子供たちも自分たちで作った庭を誇らしげに親御さんに説明したりして、楽しかったですね。」
–保育園って外部と遮断された空間のイメージがありますが「まちの縁側」ですか。珍しい取り組みですね。
「園の前は道路なんだけど実はフェンスもないんです。
もちろん園児が飛び出さないような工夫はしていますけど。
でも地域の人たちが「ここは子どもたちがいるからゆっくり走ろう」と思いながら
通る意識が生まれること、それが大事で。
その思いやりがコミュニケーションに繋がると思うんですよ。
散歩の途中に園庭のベンチに腰掛けて、子どもたちとコミュニケーションとる。そういうのが大切。
現代は地域のご近所同士の付き合いが希薄じゃないですか。
地域にコミュニティの場所が一つあって、普段顔を合わせていればもし災害が起きても
あの人は無事か、あの人はどうしたんだろって意識し合うようになると思うんです。」
–「まちの縁側」は気楽というか、さりげない感じのコミュニティの場でよさそうですね。
「僕は庭っていうのは、そこまでできると思っています。
庭の役割って生活の一部、住宅の一部分っていうだけではないと思うんです。
今は周囲との付き合いやコミュニケーションが分断されていても、誰もなにもいいません。
庭先をコミュニティの場にして話す、なんてこともあまりありません。
自分たちだけの閉じられた庭は、なんだかすごくスケール感が小さいような気がしています。」
–閉じられた庭、ですか…。
「庭の仕事をしていて思うことは「固定概念」がすごく多いなあということ。
「こうしないとダメ、こうしたらいい」とか…それって誰が決めたこと?って思います。
蓋をあけたら江戸時代からなにも変わってなかったりもするし、
イングリッシュガーデンだったらヨーロッパが正しいとか、決められたスタイルがありますよね。
それが悪いということではなくて、もちろん伝統や踏襲がその場に合っていればいいでしょうけど
もっと自由であってもいいのにとは思います。」
–山口さんのいう自由な庭づくりとは?
「単なる常識外れのぶっ飛んだものを自由って言っているんじゃなくて
庭づくりの基本中の基本は絶対に守りつつ、もっとその家の人に根ざしたもの、
地域性に合わせて色々柔軟に対応することが「自由な庭づくり」かな。
里山だったり雑木の庭だったり、色々昔のキーワードが庭のトレンドとして扱われている。
でもそれって誰かが「いい」って言ったから流行ってるだけかもしれない。
本当にその家に住まう人に根ざしてると言えるか?もっと自由にもっと柔らかく、考えるべきじゃない?と。
100年残るものをつくりたい、300年、400年残るものをどうつくるべきか、
それは“その空間を大事に慈しんでくれる人々”をつくるべきなんです。すべては人なんです。
お施主さんがこちらの意図として庭の中に入れた遊び心に気づいてくれて楽しんでくれたり、
共に愛してくれたり。それが粋ってもんだと思います。
それができる庭は流行りのトレンドを取り入れたどんな庭より、お洒落だと思います。」
–樹形が美しいということで、山採りの樹木も流行っていますよね。
「樹形のかっこよさ、絵的な美しさを優先して庭にしつらえてしまっている例もありますね。
東北の山採りの木を違う地域に植えたら絶対焼けてしまうし、
山の木の幹がすっと伸びやかで美しいのは、少しでも光を取り入れようと伸びやかになるから。
それを市中に植えたら幹の樹形はもちろん変わってきます。
美しく紅葉していた山の木は、市中に植えれば日が当たりすぎて葉が焼けてしまう。
木にとって環境の違いが大きすぎることが気になります。
美しい建築物の前に美しい自然樹形の樹木をおいたら、確かに竣工時は美しいでしょう。
根付かずに枯れたり、根付いたとしても荒れてしまうとか、数年先まで考えられているでしょうか。」
–そんな結果になると残念ですね…。山口さん自身は山採りの樹木は使わないんでしょうか?
「僕は生産木しか使いません。
生産木を山採りっぽく剪定して里山の風情だったり、山の木の樹形の美しさを演出します。
技術があれば生産木だって十分、演出できます。切る技術で木は驚くほど樹形も枝ぶりも変わるんです。
雑木風の庭も流行っていますが、雑木は手入れが難しいので10~20年もしたら手に負えなくなるかもしれない。
本気で雑木林を作りたい、成長した雑木を薪にしたいっていうのならわかりますけどね。
簡単に「山の景観」を取り入れようとしすぎなんだと思います。
「自然派志向」が過ぎるというか。その地域、その街にあった庭が一番いいじゃないか、と思いますけどね。」
–トレンドでも伝統でもなく、もっと本質的に施主や地域によりそうべきなのかもしれないですね。
今後、挑戦したいことなどありますか?
「月に枯山水を作りたいです。」
–え…??
「月で地球を借景にして枯山水をつくりたいんです。
ふざけてるんじゃなくて、本気でそう思ってるんです。
テクノロジーがどんどん進化して月に自由に行くような、住む時代になるかもしれない。
そうしたら水や木がない中でどうやって庭に表現するかっていったら枯山水しかないですよね。
しかも地球を借景に。こんなに理にかなって美しいことはないと思うのでそれが今後の目標です。」
–想像を遥かに超えた美しさのような気がします。今後の活躍も期待しております!
:取材協力:
有限会社西海園芸
代表取締役 山口 勇介
取締役 山口 陽介
取材日 2017年5月10日
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