住宅基礎工事をメインに手掛けていた有限会社和建で、真弓竜一氏が新規事業としてエクステリア事業に挑戦。独学でRIKCADをマスターし、顧客との徹底的な対話を武器に信頼を築いてきました。数々のコンテスト受賞歴、図面有料化、プレゼンのこだわりについて真弓氏にお話をお聞きしました。
この記事のポイント
真弓氏のバックグラウンド
社会人野球選手として活躍。22歳の時に急性リンパ性白血病を発症、5年間の療養生活
三重県に戻り、家業であった有限会社和建に入社(基礎工事業)
事業転換のきっかけ
28歳のときに外構・エクステリア事業を知り、新規事業として挑戦
職人を目指すも人工関節で断念 →デザイン力での勝負を決意
事業の成長
年間100件以上の案件
平均単価300〜400万円、高額案件は2,000万円超
売上は4年で3億円に到達
成長の秘訣
打合せは必ず対面、2時間以上かけて顧客の潜在ニーズを引き出す
CADでリアルタイムに提案を形にし、顧客の想像を膨らませる
業界での認知度向上
コンテストに積極的に挑戦、小さな賞からステップアップ
3年連続でエクステリアメーカー主催のコンテストでグランプリを受賞
今後の展望
建築+庭をトータルで提案する家づくりを目指す
元社会人野球選手が切り拓いたエクステリア事業
社会人野球の名門・王子製紙(株)に所属し活躍していた矢先、急性リンパ性白血病を発症。
骨髄移植手術をするも薬の副作用で大腿骨壊死になり、人工関節手術を受けた。
医者からは止められたが、選手として復帰。復帰1年後に引退した。
引退後は郷里の三重県に戻り、父親が営んでいた和建に入社した。
有限会社和建は住宅の基礎工事をメインに手掛けている会社だ。
真弓氏は自社の強みを生かしながら何か新しいことを…と模索した。
28歳の時に外構・エクステリア事業を知り、新事業としてチャレンジすることを決めた。
野球で鍛えた体力、体を動かすのが好きだったこともあり職人を目指したが、
人工関節でうまくしゃがめないこともあり断念した。
それならば、と思い立ちCADの導入を検討する。
真弓「導入のきっかけは協力会社がRIKCADを使用しており、勧められたことです。講習は4回ほど受けましたがあとは独学で習得しました。1日中、朝から晩まで時間があるときはずっとRIKCADを触っていました。CADはやればやるほど身について、スキルアップを実感できました。できることが増えていくのが楽しくて、まったく苦ではありませんでした。」 |
4年で売上3億円、成長のカギは熱い“対面プレゼン”
真弓氏が不慣れなCADの操作を克服できたのは、明確なビジョンを持っていたからだ。
一ヶ月ほどでお客様に提案する図面が描けるようになり、外構・エクステリア事業を本格的にスタート。
真弓「友人のネットワークを通じて仕事に繋げました。その後は、ご紹介案件が多いです。SNSを通じてのご依頼も多くいただきます。現在は平均で月15件ほど、問合せがあります。年間100件くらいの案件、売上は3億円です。案件の平均単価は300~400万円ほど。年に数件、2,000万円超えの高額案件もあります。作図の手伝いにきてくれているスタッフが退職予定です。自分一人では限界を感じてきておりますので、仲間を増やし、より強固なチームを作る必要があると感じております。」 |
事業立ち上げからわずか4年で売上3億円まで事業を成長させた。その秘訣は熱量の多いプレゼンにある。
打合せはオンラインではなく、絶対に対面で行うという。
いったん予算を忘れてお客様に要望を洗いざらい、話してもらうことにしている。
潜在的な希望を呼び起こすために、徹底的に踏み込むそうだ。
ヒアリング時間は実に2時間を超えるという。
真弓「とにかく会って熱意を直接的に伝えたいんです。そのために、とことん時間をかけてお客様の要望をお聞きし、お客様が気づいていない潜在的なニーズも掘り起こす必要があります。その際にCADで描きながら形にしていくので、話しながら作図するのはなかなか大変です。でもお客様が自分の希望を可視化して、もっとこうしたい!と想像や希望が膨らんでいくのは意味がある時間だと思います。」 |
▲施工事例(提供:有限会社和建)
数々のコンテストでの受賞歴。注目される存在へ
三重県は老舗のエクステリア業者が多い地域だ。
その中で差別化を図るため、デザイン力を武器にコンテストへ挑戦した。
小さな賞からステップアップを重ね2023年には三協アルミ“デザイン大賞、2024年にはYKKAP“金賞“、
2025年にはタカショー”グランプリ”を受賞。3年連続でEXメーカー主催のコンテストで日本一に輝いた。
数々の受賞歴は信頼の証となり、顧客からの評価も高まっている。
真弓「応募のきっかけは、EXメーカーの担当者からのお声がけでした。業界内でネームバリューを得るにはコンテスト受賞は必要だし、自身の実力を可視化するにもいい機会だと思いました。まずは小さな賞からの受賞を目指しました。その後は階段方式で着実にステップアップしていこうと決めて、応募を続けてきました。」 |
▲数々の表彰盾が並ぶ打合せスペース
図面の有料化と“植栽へのこだわり”
2025年1月からは図面の有料化に踏み切った。
「デザインの根幹である図面に。付加価値をつけるのは大切」と真弓氏は語る。
成約時には図面代を費用から差し引く仕組みで、クリエイティブの正当な評価を目指している。
プランに建物データを必ず入力し、植栽を配置することにもこだわっている。
真弓「建物なしで外構の提案はできません。CADで建物データを入力します。植栽に関してのこだわりは、図面で入力した樹高となるべく近い樹を探して植えるようにしています。樹高がある成長している木を植えるのは大変なのですが、木が大きくなりすぎてイメージと違う…というお客様の失望を避けるためです。」 |
目指すは“建築と庭を一体にした家づくり”
今後の展望として、建築と庭をトータルに考えた家づくりを目標にしている。
現在進めているプロジェクトでは、トータルで家づくりに取り組んでいる。
真弓「5~6年後には年間3件くらい、建築込みのトータル提案ができるようになるのが目標です。家づくりは団体競技だと思っています。いいチームワーク、関わる全ての人のバランスが整ってこそ、いい住まいが生まれると思っています。野球で培ったチームワーク、周囲を巻き込むスタイルでこれからも邁進していきます。」 |
▲モデルハウスとしてプロジェクト進行中の物件(提供:有限会社和建)
:取材協力:
有限会社和建
所在地 三重県鈴鹿市
代表取締役社長 真弓和則