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事例・実績 株式会社安行庭苑

植木の産地として有名な埼玉県川口市安行で造園、外構の設計・施工をおこなっている株式会社安行庭苑。
一般邸宅の提案から駐日大使館公邸の改修工事や文化財指定邸宅の庭改修や維持管理などを手掛けています。
華々しい実績を持つ安行庭苑が歩んできた道のりや庭づくりに想うこと、若手の人材育成について
代表の安藤潔氏と取締役の小林純子氏にお聞きしました。


 

–安行庭苑の創業はいつ頃なんでしょうか?


もともと私たちは安行造園という老舗の造園会社に勤めていました。
私自身は安行造園の松本社長に声をかけていただきご縁をいただき入社しました。
埼玉支店の立ち上げの時に
採用されたのが純子さんと森さん(現専務取締役)でした。
数年後に松本社長がご病気になりお亡くなりになって…。
ご家族の誰も継がないということで廃業が決まったんです。

ただ、私はどうしても諦められなくてやれるところまでやろうと言い続けました。
資本等、会社の体制を全て変え敷地の一部をお借りし、顧客、車両など全てゼロからの
“株式会社安行庭苑”として新たにスタートしました。」


「震災の年なので12年前のことですね。
ほとんどの方は残らなかったですけど、社長(安藤さん)と森さんと私が残って。」

 

 

–先行きのことなど、不安はなかったですか?


「しばらくの間は結構大変でした。経営なんてはじめてだから手探りでやるしかなくて。

でも不思議と不安はなかったです。
私たちの仕事は技術と鋏と営業と真心があればできるという、先行投資が少なくて済む仕事だったから。
初期のつらかった時期に戻りたくないなんて言う人もいるけど、
私はあと5~6回くらいやってもいいかなと思ってます(笑)
冒険の毎日だったし、とにかく必死で楽しかった思い出でもあります。」


「そうですね。しんどかったけど思い出はたくさんあります。
お客様の感謝の言葉をいただくたびに、いい仕事だなあと感じます。」

 

 

–RIKCADはいつ頃導入されたんでしょうか?


「前身の安行造園の頃から使っておりましたので、そのままRIKCADを使用させて貰っています。
CADは特に外構や要素が多い大型案件になればなる程、要素を表現しやすく機能を発揮しております。
設計・提案ツールとしてとても助かっています。」

 

 

–集客はどのようにおこなっていますか?


「集客は新規2割でリピート 8 割ほどなんです。
業務の内容でいうと管理工事4割、作庭3割、外構3 割ほどの割合になります。

 

 

–リピート率がものすごいですね。
安行庭苑は駐日カナダ大使館公邸の改修や維持管理もされていますが、
それも縁あってのご紹介なのでしょうか?


「いえ、弊社のwebサイト経由でメールで問合せがきました。
最初は驚きましたが話が進む中で、外務省の認定をいただき池の改修や樹木の維持管理をおこないまして、
そこから他国の大使館・大使公邸の改修作業や維持管理もおこなっております。」


「私が担当させていただいている(株)ニトリ様所有の記念館や迎賓館のお庭の改修や、
樹木の維持管理もおこなっていますが、(株)ニトリ東京本部近くのお庭で剪定工事中に担当部長様に
お声がけいただいたのがきっかけでした。」


▲施工事例

 

–問合せメールで来たなんて驚きました…! また直接のお声がけという例もあるのですね。
施工事例を見ていると和風と洋風の案件のバランスがよいと思うのですが、
意図して平衡になるようにしているのでしょうか?


「全くそんな意図はないです。そもそも庭空間においては『この庭は和風だ。この庭は洋風だ。』とする
明確な定義もないですよね。庭は利用や鑑賞などをする場なので、
例えば
江戸の大名庭園には当時、野菜畑や薬草畑、馬場の練習場なんかもあったりしました。
日本にはなかった珍しい植物を植えてみたり、西洋のタイルを入れてみたり…。
現代では大名庭園って和風のジャンルになってしまうけど、
庭はもっと自由に垣根なく時代に応じた楽しみ方で変えていけばいいと思うんです。
施主様のご要望に合わせてかつ、時代に則した提案を心掛けているので
自然とそのようなバランスになっているだけですね。


▲施工事例

 

–営業や設計は分業でされているんでしょうか?


「分業制にはしていないです。営業と設計を分けた方が効率がいいとされていますが、
その点に関しては懐疑的に思っている節もあります。
日本は昔から庭師が墨絵を描いて設計から施工までしてました。
それは外構もそうで設計者が施工までやれるのが理想だと思います。
造園に芸術性を付加するのであれば設計者が施工までできないといけないし、
仕上げまで全て自分でするからこそ造園家、芸術家たる所以だと思います
庭園の設計・施工ができることだけではなくて知識・文化・教養も必須だと思っています。」

 

 


–設計も施工もできるというのは理想的だと思います。教養が必要というのは…


「もともとあった庭を壊して、現代のエクステリア・ガーデンに作り変えるという
リノベーション案件も増えています。使用していた石や植栽、灯篭なんかの石造品が

エクステリアやガーデンに合わない気がしてお客様は「廃棄するしかないですよね?」といわれます。
ちゃんと知識や教養があれば石造品は美術品という位置づけができ、『こういう使い方をしましょう』、
『場所によってはマッチしますよ』と提案するとご納得いただける場合もあります。
せっかく家に代々伝わってきた美術品であり、石の塊ではないという理解を深めることをこちらが話せるかどうか。
造園資材の価値を見出したりその庭園の評価をし、いわゆる箔付けできるかどうかは大きいと思います。


「そのように箔付けして、お客様の意識が変わった案件もたくさんあります。

庭の改修工事だったのですが、今まで草むらだったところに遠路を作ったり、
もともとあった今は枯滝になったものを
再利用したりして回遊式の庭園を提案しました。
そのお客様はまだお若いですが「庭で水やりをするのが至福の時間になりました。」と嬉しそうで。
今までそんな風に過ごしたことはなかったんです、と。
自分の中の新たな一面に気付かれたというか…。

 

 

–体感してはじめて自然的なものが好きだった、と気づきを得たんですね。
家も資産ですが庭も文化的資産として大きいと思います。


「自然を愛でるとか慈しむというのは心に余裕があることも大事ですが、

基本的には誰しもが宿している心だと思います。
庭は家にとっての文化資産になりますし、庭を慈しみ育んでいく悦びを
家主に伝えるために作り手の言葉の重みが重要です。

文化的な価値をどれだけ伝えられるかが鍵なので教養は大事です。
造園のことだけ勉強していればいいという話でもなくて文学、絵画、書、料理、陶器、茶、華道…
全ての文化的なことを網羅した方がいいとは思います。
特に文化財の邸宅や古くからの邸宅のお客様はお客様自身が文化教養に長けた方が多く、
庭以外の文化についてもお話する機会があります。
作り手に造園に対してちゃんとした価値観を持っていないことはお客様に伝わります。
そうしないと芸術をつかさどる「造園家」ではなく、植木の剪定の「作業員」になってしまいます。
また、庭は建築の下請け的なポジションで捉えられてしまうこともありますが、
教養があれば建築家や他分野のプロフェッショナルとも学際的な話ができるので渡り合えます。」


▲施工事例

 

 

–安藤さんはE&Gアカデミーでも講師もされていて、
教養や知識の大切さというものは常日頃から社員に伝えているかと思うのですが、
人材育成についてはどうお考えですか?


「弊社は経験者・未経験者・年齢・性別を問わず“やる気”がある人材であれば
試用期間を経て採用しています。
“基礎”と“基本”そして“技術”と“技能”など造園業として働くうえで
根本となることを常に社員と共有し、確認しあうようにしています。
担当外でも情報や設計・現場の進捗状況を共有して、未経験者でも仮想の経験をさせて
現場から遠ざけないようにしています。
さきほども言いましたが、文化面の教養はとても大事なので、
造園史などを学ぶこと、設計や現場で実践する事で
“文化の担い手”“芸術の一つの分野”であることを自覚する環境づくりを心掛けています。

 

 

–事前のヒアリングシートには「社員のサラリー手取り50万円以上」を目指すとあって驚いたのですが…


「若い人材を育成して人数を増やしてどんどん会社を大きくする、等は考えていません。
ただ、小規模な会社なりのメリットもあると思っています。
ベンチャーほどの歩合制ではなくても、自分でどんどん仕事をとってきて案件まとめて…
というような
社員がでてくれば、そこはフレキシブルに出来高制でいいと思っています。
別に社長がいちばん高給取りである必要はないんですし。
ベンチャー的な要素もあり、組織の安定もあるハイブリッド型の運営がいいな、と。

営業も設計も現場監督もオールマイティにこなせる人材の方が合っていると感じています。
時代が求める時にどの位置でも特化できるような感じで準備をしています。
ですので、数の原理よりも少数精鋭の方がいいというか…。
仕事内容、人材は“量より質”を重視しています。」

 

 

–少数精鋭のチームみたいな感じですかね。それとももう少し濃いファミリー的な感じですか?


「家族的ではないんですよね。よく皆と一緒に事務所でご飯は食べますけど。
でも、ただの個々の集まりって感じでもないんですよね。
わりとドライなんだけどファミリーほどの暑苦しさはないというか。
一緒に戦うチーム…戦略を練る人がいて特攻隊長がいて、戦国武将みたいな(笑)」


▲同じ釜の飯を食べることも(画像左) 文化面の教養を磨くための書籍も充実(画像右)

 

 

–家臣団みたいですね(笑) 今後の目標やビジョンをおききしてもよろしいですか?


「常にロマンとビジョンを追い求めること。これは(株)ニトリの似鳥昭雄会長から直接教えていただきました。
仕事の背景や目的を明確にし、立場を問わず共有することを忘れないこと。
経営や人材育成において多種多様の多くの人の話を聞き、情報を得て自分なりに昇華させること。
社員がどのような未来になるのか楽しめるような環境をつくること。
1000 年以上の歴史を持つ業種であることに誇りを持ち、
しかし現在にも「庭」という空間が存在していることを文献、論文、造園史などから常に学んで
未来に繋げていくことですね。

 

 

–ありがとうございました。今後の活躍も楽しみにしております!


▲安行庭苑の看板猫のうたまろ(別名ニャン太郎)くん


:取材協力:
株式会社安行庭苑
代表 安藤 潔
所在地 埼玉県川口市

取材日 2023年7月19日

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