2010年に独立し、アトリエ設計事務所の代表として活躍している完山氏。個人邸から大規模物件まで多岐にわたる設計を手掛けています。
効率アップや生産性の向上、社員教育にもARCHICADを駆使しています。またARCHICADのセミナーでは講師としてスキルやテクニックをレクチャー。
完山さんにとって「欠かせない武器」となったARCHICADの活用事例をご紹介します。
–独立されて10年。現在のお仕事の状況は…。
「お客様を介し様々な仕事がくるようになりました。個人邸から不動産関係のお仕事まで。
不動産関係のお仕事はまた次、また次という感じでつながっていき、リピートでご依頼いただく場合が多いです。」
–ARCHICADの説明に完山さんが設計された清水焼の施設がグラフィソフトの展示会でよく使われていますね。
「前職でもARCHICADを使用していてその時にグラフィの方々と知り合い、それからのお付き合いです。
あの建物の設計時にARCHICADを使っていたので、提供しています。BIM活用はあの建物がきっかけですね。
約450㎡くらいの木造建築で、前職で知り合った工務店からのお声がけでした。」
▲施工事例「清水焼の郷会館」
–提案はどのように行うのでしょう。
「規模の大きさに関わらず提案書をきちんとつくります。きっかけになったのは、
独立して仕事が少ない時期に東京の不動産関係の会社にご依頼いただいて、遠方でそんなに打ち合わせできない中で工夫が必要で。
売り出す土地の情報、沿線情報と合わせ、建物の具体的なイメージを出す場面でしっかり作り込んで、外観・パース・立面図・断面図も見せて説明し、
理解していただきました。これから仕事をもらうための投資として提案書の段階から時間をかけたんです。
完成形に近いものが最初から伝わっている方がいいと思ったんです。」
–提案書の段階でそこまで作りこむことのメリットは?
「これはイメージですという出し方ではなくて、これでいきましょう、と完成に近いものをお見せすると安心感を持ってもらえるかな、と。
現在、進行しているホテルの案件は実は二件目の案件で。
一件目の提案時に見せたものと施工されたものに大きなイメージの違いがなく事業主にとっては安心材料になったのだと思います。
大きな規模の物件だと、完工前に売り出すじゃないですか。あくまでイメージです、とは伝えて売り出すのですが、明らかに乖離していると売る側も困りますよね。」
–未契約の時点でたくさん時間をかけるのはハードルが高い気もします。
「基本設計時に実施設計のことまで考えてやっています。ある程度経験もいりますが…。とりあえずで入れてしまうと後の編集作業が大変だし、
提案してお客様が気に入ってくれた後で、法規的に無理でしたとか、あくまで提案書の話であってこのデザインはできませんとはなるべく言いたくなくて…。
だったら提案の時点で、時間をかけてでも実施設計のポイントはおさえておこう、と。それを補うためにARCHICADを活用します。」
–効率をよくするための工夫などはありますか。
「モデリングをテンプレート化して、データを共有することで効率アップを図ったり、新人の教育に役立てています。
プランは違えど、ルーティンとしてやらなければならないことは共通しているのでモデリング、提案書作成、
CADを使った設計・図面作成、インプットとアウトプットの練習にもなります。」
–ARCHICADを使う利点は?
「クライアントのために使っている面もおおいにありますが、一番は自分のために使っています。
効率アップもそうだし、複数の案件が動いている時にかけられる時間が少ない中でしっかりとした設計をするために必要な武器です。
限られた人材、リソースの中で内製でできることは全てやる。コストをかけずに提案書を作成できる武器だと思っています。
ARCHICADでは実施図面が描けないのではないかと思っている方もまだ多いと思います。もちろん、そんなことはありません。
施工現場の職人の方々にデザインだけを押していくと敬遠されがちです。
できるだけデザインもしっかり、図面もちゃんと書いて設計図として見せます。そうすると建設会社にも信頼してもらえるようになり、
そのこともリピート案件につながっているのかもしれません。『あそこの事務所は図面とほぼ同じように現場が仕上がる』と印象に残るのではないかと…。
まだまだ若手の自分がどうしたら信頼を得られるのか考えた結果です。先行投資じゃないですけど、先にだしていく。
先手を打つのにARCHICADは欠かせません。」
–グラフィソフトのセミナーで講師としてレクチャーして、惜しみなくスキルや情報を開示していらっしゃいますよね。
「まだ2次元でやっているところも多いと思いますが、3次元でやっていきたいと思う方や、やらざるを得ない方のお役に立てればと思っています。
3次元を扱う方も増えてくるだろうし競合は増えることになりますが、うちも別に独自性の高いことをやってるわけではないし、
習得しようとおもえば誰でも習得できることです。だからオープンに情報を共有しています。
そこから発展していき、広がっていく方がいいと思いますし。建築業界はその辺が比較的オープンですね。」
–弊社の3D植栽素材集をお使いいただいておりますがご活用いただいてますか?
「活用しています! 植栽はないと殺風景で雰囲気が乏しくなるので…。緑が入るとやはり良いです。
フォトショップで植栽を合成加工するよりCAD上で配置してしまえばそのまま出力されるので効率がいいです。
少しの空きスペースでも植栽は入れるようにしています。
植栽はカットされる場合もあるんですが、予算の兼ね合いでカットされるのであればうちからプレゼントする場合もあります。
やはり植栽をいれたいと思うんですね。建物のデザインをよく見せてくれますし、植物があるのとないのでは、やっぱり仕上がりに差がでます。」
▲イメージパース「浪速区のホテル」
–外構やエクステリアについてのこだわりや考えをお聞かせください。
「傾向として、建物にかけるコストは潤沢にあるわけではなく、素材的にも新建材が選ばれることが多くなってきています。
そんな中で外構やエクステリア部分で袖壁に自然素材を使用したり、植栽を添えて自然なものを取り込む。
部分的にでも自然の風合いの良いもの入れることで、予算的には大きな影を出さずに良い感じの雰囲気が出せるのではないかなと思います。」
▲施工事例「金山精機製作所本社ビル」
▲施工事例「大宮の家」
▲イメージパース「山百合の家
取材日 2020年2月14日
:取材協力:
株式会社アトリエスイッチ一級建築士事務所
代表 完山剛
所在地 大阪府大阪市